それから数日後のことである。
クペルスは逮捕された。アバンが渡した数枚の紙は、クペルスが村人から徴収した金の一部を、数年に渡って自分で使っていたという証拠を示す物だった。

アバンは村の手伝いなどしながら、クペルスの家に、よくベンガーナ百貨店の馬車が止まるのを異様に思っていた。それを村人に尋ねたこともある。
「なあに、クペルスさんは昔ベンガーナにいたんだってさ。そのときのよしみで、ああやって来てくれるんだと。今でも金持ちだが、昔はもっとすごかったんだろうなあ」
こういう返事が返ってくるのだった。
それで不審に思ったアバンが、クペルスの家来に、話を( 無理やり? )聞き出し、証拠となるベンガーナ百貨店の受け渡し証を手に入れたというわけだ。
アバンの手紙にはこうあった。


[こんなことをするのはまったく気が進まないのですが、よくして下さったランカークス村の皆さんの大事なお金が正しく使われていないことに、怒りを覚えました。あたたかいランカークス村が、ランカークス村であるためにも、悲しいけれど、こうして調べさせてもらった次第です。クペルスさんも寂しかったのでしょう。もし彼が戻ってきたら温かく迎えてあげてくださいね]


「何であんなやつを温かく迎えなくちゃならないんだ」
ジャンクは手紙の内容を聞かされてあきれてしまった。ジャンクはクペルス逮捕時、思い切りクペルスを殴ったのだった。スティーヌがその場にいなかったら、ジャンクが傷害の罪で逮捕されていたかもしれない。
「そこがアバン様のいいところなんでしょう、きっと……」

スティーヌは、ポップが元気でいることだけを祈っていた。
そしてアバンがポップを守ってくれるようにと、ただそれだけを願っている。


*****************************


この小さな村は10日前と何も変わっていない。
ただ、武器屋の息子と、腹黒い領主がいなくなってしまったことを除けば。
この後ポップがランカークス村に帰ってくるのは、実に1年以上先になる。
そしてその時アバンはもういないということを、誰も知らない。


それは、旅を始めたアバンとポップにさえわからないことなのだ。
この旅の終末に、ポップにとって最大の悲しみが訪れるということを、誰一人気づかない。
その悲しみが次の冒険を生み出すことも…。


終わりは始まりだったのだと、大人になって少年は気づくだろう。
いろんな経験をしたと、いい経験だったと、後で気づくだろう。


今はただ楽しい旅であらんことを……。




…The End…
あとがき

私は等身大の人物しか書けません。とても凝った作品は書けなくて…。
(みなさんはすごいんです、私にはとてもあのような想像力・創造力はない)

意外とポップとアバンの出会いはどなたもお書きになってないみたいです。
勝手に想像して書いてしまった。

今回特別出演を、強盗「カンダダ一味」にお願いしました。
アバン先生は勇者なんだから、ここで使った呪文使えますよね?






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