家に帰ったジャンクとスティーヌは、ポップがいないのに気づいた。
部屋は何一つ変わっていない。ただ置き手紙があった。


[親父。母さん。おれ、行ってくる。
どうしてもアバン先生と一緒に行きたいんだ。
おれ今までこんなに何かしたいと思ったことはないんだ。
だからアバン先生と旅に出る。
母さんはとても心配するだろうな、でも大丈夫だよ。
アバン先生の強さは知ってるだろ?
帰ってくる頃は、きっとすっげえ一流戦士だぜ、おれ。
親父、母さんをよろしく頼むぜ。
おれ、必ず帰ってくっから。じゃあな!]


「なんだこれは!」
ジャンクは飛び出そうとした。それをスティーヌが引き止めた。
「あなた、きっとポップは戻ってきませんわ。こんなことになるのなら、ポップをアバン様に会わせるのではありませんでした…。ポップの身に何かあったら…。」
スティーヌは、ポロポロ涙をこぼしている。
「泣くな!もうあんなバカ、息子とは思わん!あいつが戻ってきたらたたき出してやる!」
「そんなことおっしゃらないで……」

しかしジャンクは心のどこかで、怒り以外の感情も湧きあがってくる。
(…あいつが家出までしてでもついて行きたいアバンという男はすごいやつだな、あいつをあそこまで思わせる人間はいなかったからな…)

そしてスティーヌには聞こえないよう、ぽつんとつぶやいた。
「もし一ヶ月くれえで帰ってきやがったら、二度と家には入れねえからな!」







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