クリフトの結婚



サントハイム城、図書室でアリーナは勉強中だ。講師はクリフト。
しかし、このおてんば姫が授業をまじめに聞いているはずがない。

「姫様。今私が申し上げました所を、復唱なさってください」
「ねえ、クリフト」
「はい」
「私ね、あしたエンドールに行くの」
「姫様。お出かけのお話は、この勉強が終わってからじっくりお聞きいたします。今は、この本を」
「うふふ、楽しみ〜」
「姫様」
「早くあしたにならないかな〜」

クリフトは授業の続行をあきらめた。アリーナは明日のことで頭がいっぱいで、一向に聞いている様子はないからだ。これでは覚えられるものも覚えられない(もともとアリーナには覚えようという気もない)。

「なに、もう勉強おしまい?」
「姫様が上の空ですから」
「あ、クリフト怒ってる?」
「いいえ」
クリフトのあきらめの表情を見ながら、アリーナは少し笑った。

「エンドールには、何をしに?私もお供いたしますから」
「あら、いいわよ。大臣と女官とで行くから」
「いいえ、姫様をお守りするのは私の仕事ですから」
「クリフト。今、世界は平和になって、魔物も出て来ないのよ。万一、出たとしても、この私がやっつけちゃうわ」
「ですが…」
「クリフトにね、あしたお父様から大事なお話があるんですって」
「陛下からですか?」
「そう、だからあしたはクリフトは留守番」
国王からの大事な話とは何だろうと、クリフトはアリーナの心配より、そちらが気になった。






BACK  MENU  NEXT