私は惨劇のあとのような部屋にぽつんと座っていた。
そして、壊れた銀板カメラのシャッターを押した。


そう、壊れているのだ。
シャッターは落ちなかった。
落ちなかったシャッターと部屋中に落とした後悔。

存在しているものを映像に閉じ込めて、その瞬間を切り取ってきた。
切り取られた瞬間はどれだけ繋いでもひとつの時間とはならない。
何でそんなことに今頃気づくのだ。

私が撮ってきたものは、そのときそのときの瞬間の姫様。
それを繋いでためて、姫様という偶像をつくるより、もっとできることがあったのに。


わかっていたのにできなかった。
違う。


わかっていたのにできなかった、ということはわかっていなかったのだ。


姫様にいつも言ってきた言葉じゃないか。



壊れたカメラの中では、もう誰も微笑まない。
壊れたものに永遠なんてありえない。



笑いがこみ上げる。
涙がこみ上げる。




最後の授業は、こんな風に終わったのだ。
私と姫様も、こんな風に終わりを告げた。







救われない壊れたクリアリを書いてみたくて。
高潔な性格のクリフトが最後だけ人間ぽくてもいいかなと。
でもこのクリアリは、ちょっと痛すぎてイメージとかけ離れていますが。

ところで、クリフトの最後の台詞は ドーデ作「最後の授業」をちょっと頭において書きました。






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