魔法の鏡




旅先の夜。


クリフトはひそかにミネアの占いの館を訪ねた。
旅先の資金稼ぎに、ミネアはよく占いの館と称しテントを出している。
クリフトは普段から気になってはいたが、占ってもらったことはなかった。
順番を待つ間心もとなかった。女の子が圧倒的に多い。


「クリフトさんじゃありませんか、こんな夜中にどうなさったのかしら?」
「実は、その、あのですね」
「アリーナさんとの恋の行方?」
「ど、ど、ど、どうして、話す前から、わ、わ、わかるんですか?!」
普段のクリフトらしくない慌てぶりにミネアは苦笑した。
「皆さんご存知ですよ」
「ええっ!皆さんご存知なのですか!」
ミネアの頭に、バレバレじゃん、とマーニャの台詞みたいな言葉が浮かんだ。



「それで?この先どうなるかということ?」
「……いえ、どうにもならないことはわかっているんです」
「?」
「どうにかなろうなど思っておりません」
「………」
「ただ、この先、私がお仕えすることが姫様の邪魔になる日が来るのではないかと、そういう時期がいつごろ来るか、お教えいただきたいと思いまして」
「アリーナさんが結婚するとき?」
(クリフトに精神的な100のダメージ!)
「そんな、はっきりおっしゃらなくとも…」
ミネアは水晶を見た。


「そうですね……時期はわからないけど――――」
しばらくミネアは黙って水晶を見ていたが急に言った。
「ああ、そうだわ」
「?」
「クリフトさんにいい物を差しあげますわ」
そう言うとミネアは道具袋から鏡を出した。
「鏡ですか」
「ただの鏡じゃありませんの。これは魔法の鏡。好きな相手の方の想いがこの鏡に映ります。つまりクリフトさんならアリーナさんの想いがこの鏡に映し出されるのですよ」
「……恐ろしい鏡ですね」
「私の占いよりももっと的確に判断できますわね」
「………」







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