「あとでアリーナの部屋に行ってくれ」
「はい」
「泣いておったぞ、クリフトを叱らないで、私を叱って、だと。まったくいつからあのように女らしくなったのか。男勝りだと思っておったのに、好きな男をかばうなぞ…」
「…………」
「何だ、その顔は。クリフト、わしは皮肉を言ったのではないぞ。頼むぞ、アリーナを」
物分りのよい(娘には甘い)この国の王は満足げな表情で教会を出た。



「クリフト、陛下はお寂しいのじゃ」
「はい、わかっております、ブライ様」
「うむ」
「良かったな、クリフト」
「はい、神父様」
「しかしいささか手が早いようだ、そうはお思いになりませんかな、ブライ殿」
「わしもそう思いましたぞ、神父殿。戦闘では姫様が一番素早かったのじゃが、この件に関してはクリフトは素早かったの」
クリフトは真っ赤になった。
「ブライ様!神父様!わ、私は、私たちは、お、お互いの合意の上でですね」
神父とブライはくっくと笑っている。
真面目な神官をからかうネタがまた一つ増えた。




アリーナの部屋。ベッドで休むアリーナの近くにクリフトは椅子を寄せた。
「クリフト、ごめんね」
「どうして謝られるのです。むしろ私のほうが、とんでもないことを」
「とんでもないこと?」
「あ、い、いえ、その」
「冗談よ、もうクリフトはすぐ真面目に取るのね、人の言ったことを」
アリーナはくすっと笑った。

「私ね、お腹に赤ちゃんがいるって知らなかったの」
「………私も全然気づきませんでした」
「飛んだり跳ねたりしてたんだけど、大丈夫よね?」
「姫様、これからはお体を大事になさらないと」
「うん、しばらくは武術の稽古できないわね」
「姫様」
「わかってる、ちゃんと体をいたわるわよ。だって」
「だって?」



「私とクリフトの赤ちゃんだもの。私すごくうれしいの」
「私もですよ」




甘いベーゼ。









むかむかするのは作者のほうです。激しく甘すぎの終わり方……。




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