分かりかけたこと




「クリフト、いるー?」
アリーナはいつものように教会に顔を出した。

「姫様、もう、勉強の時間は終わったのですか?」
クリフトではなく、神父が返事をした。

「あ、神父様、クリフトは?」
「あいにく所用で出ておりまして。用件でしたら伺っておきましょうか?」
「ううん、急ぐ用事じゃないの。
ただ、今日ね、謁見のときに、旅の商人が珍しい書物を献上、とかいう話だったの。
それでその本を図書室に納めてあるから、クリフトが興味あるんじゃないかと思って」
「それはきっと喜びましょう。ブライ様と出かけたのですが、姫様はご存じなかったのですか?」
「ブライが出かけたのは知ってるわ。
ゴットサイドに行くって言ってたもの、え?まさか、クリフトも一緒にゴットサイドに?」
「さようでございます」
「どうして何も言わなかったのかしら。
いつもなら、ちゃんとどこどこに行くって、言ってるのになあ」



神父は少しため息をついた。
「姫様、最近、クリフトは疲れておりまして」
「え……?」
「クリフトはああいう性格ですから、何も言わないのでしょうが、毎日のように諸外国から書状が届きまして」
「書状って何の?」
「簡単に申し上げると、仕官の誘いです」
「……なんですって?」


アリーナには初耳だった。







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