「クリフトがいないときに一度、姫様にお教えしておきたいと思っておりました。
クリフトは何も言わないでしょうから、それこそ、この私の余計なおせっかいではありますが」
「いいえ、神父様、もっと詳しく聞かせて欲しいわ」

「姫様たちが世界をお救いになり、サントハイムが元のように戻ってからというもの
クリフトに仕官の誘いの書状が毎日のように届いておりまして」
「どういうことなの」
「クリフトは最初は姫様のおつきで冒険を始めたものの、最後は勇者様の一行として世界に名をとどろかせたわけです」

それはちょっと大げさな物言いだと思いつつ、アリーナは続きを聞いた。

「そういう神官なら、どの国も手元に置きたいと思うのは当然のこと。
ましてや、クリフトは賢明でもありますし、まだ若いですし、文武に優れているわけですから」
「文はともかく武に優れてるかなあ?私より、はるかに弱いわよ」
「姫様は別格ですから」
「神父様も遠慮ないわね、まあ、いいわ。それで、クリフトはそういう誘いをどうしているの」
「もちろん断っております」

さもあらん、とアリーナは内心思う。

「ですが、ゴットサイドの大神官様から何度も何度も書状が届きまして
さすがに手紙だけでお断りし続けるのも失礼に当たると考えたらしく
今日、ブライ様と直々に断りに出かけたわけです」
「……そうだったの」


「姫様。クリフトは今、とても疲れていると思います。
それはこの仕官の誘いの問題だけではないように思うのですが
さすがにそこまではこの私には分かりません」
「私にも分からないわ。でも、クリフトに一度聞いてみようかな」
「そうしていただければ。姫様に申し上げようか悩みましたが、国王陛下に申し上げると、もっと大事になりそうな気もいたしまして」
「大丈夫よ、私に任せてね、神父様」




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