世界樹の花



テーブルに置かれた世界樹の花。パーティはそれを見つめたまま、黙りこくっていた。
死者をも生き返らせるという奇跡の花。この花を誰に使うべきかはみんなわかっている。
しかし割り切れない思いがパーティ全体を覆っていた。

自分たちの大事な人々が死んだ。あるいは行方不明だ。もう二度と会えない。
なのに、なぜ彼の恋人を生き返らせねばならないのだろう。自分たちの愛する者を奪った彼の。

理不尽だ。

だがそんなことを考えている、自分たちの醜さにも気づいていた。
なぜなら彼…つい先日まで戦っていた魔族の王ピサロ。
今は憎しみだけを抱えている魔物デスピサロとなっている彼の恋人…ロザリーには何の罪もないからだ。
むしろ自分たちと同じ人間が彼女を殺した。
そのことが全員を苦しめていた。


ソロが突然立ち上がった。
「よし!ロザリーヒルに行こう!この花を墓前に捧げよう!」

「ソロはそれでいいの?」
アリーナが尋ねた。ソロはこくんとうなずいた。
「ブライさんもクリフトもきっと苦しいだろう、でも…」
「勇者殿、みなまでおっしゃいますな」
「ソロさん、サントハイムの人々は必ず戻ってきます」
アリーナは笑って言った。
「そうよ、ソロ。お父様や城のみんなはきっと無事なのよ。そうに決まってるわ」

ソロはマーニャとミネアを見た。
「エドガンさんにも、この花を捧げたいんだ…だけど…」
「バッカねえ、ソロは。私たちは敵討ち済んだのよ。お父さんもきっと喜んでるわよ」
「そうです。ソロさん、どうぞ私たちのことは気になさらずに」

「ソロ殿。ささ、早く参りましょうぞ」
ライアンが声をかけた。
「ライアンさん…ライアンさんは…仲間の…」
「我々王宮戦士は、王の命令とあらば命をも捨てる覚悟。友も本望だったのでござる」
ライアンはそう言うと目を伏せた。ソロにはライアンの言葉の裏にある辛さがよくわかる。


「それより…ソロは本当にいいの?」
アリーナがもう一度言った。
「シンシアさんや村の人たちを救えるかもしれないのよ、その花で」






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