溶解





優しいのに、限りなく優しいのに、どこか人を受け付けないようなところがある。
人に気を使ってばかりいる。細かいことによく気を配る。
だが、無駄話にはほとんど乗ってこないし、ちょっとつまらない。


クリフトの第一印象はそんな感じだった。


「助けていただいて感謝します、姫様も私も、勇者さんに助けていただいたようなものです。
自分では及ばないとは思うのですが、精一杯お手伝いさせていただきます」

年はほとんど変わらないのに、タメ口で話さない。
どうもそういうところが俺にはついていけない。



「ソロはさあ、クリフト嫌いなの?」
あいつの主人たるお姫様(これでお姫様なんだから俺は正直驚いた)にそう尋ねられた。

「え?なんで?そんなこと思ったことないよ」
ちょっと話しづらいが、嫌いだと思ったことはなかった。

「だって、なんだかクリフトと合わなさそうなんだもん」
「そう見えるか?うーん、そうかもしれないなあ……。なんかさあ、真面目すぎるだろ、あいつ」
「それがクリフトのいいとこなのよ、真面目で優しくて」
「うん、それはわかるよ。でも俺は、クリフトはもう少しくだけたところがあっていいと思うんだけどなあ」

「私は小さいときからクリフトを知ってるから、クリフトのお茶目なところも知ってるわよ」
「そうかあ?まあ、俺は知り合ったばかりだし、最初に会ったときはベッドで寝てた真っ青な顔しか見てないし、ほんとのクリフトを知るのは今からかもな」

「ねえ、クリフトを嫌いにならないで」
「だから嫌いじゃないよ……なんで、そんなに言うんだ?」
「え?なんでって…なんでかなあ……うまく言えないけど、クリフトが人に嫌われちゃうのいやなの」
へえ、家臣思いなお姫様なんだな、と思った。

「クリフトのこと嫌いだって思うやつなんかいないだろ、いいやつじゃん」
「だったらいいけど。ね、クリフトってほんとにいい人なのよ、それに結構天然なんだから」
それをお前が言うか、と思ったが口には出さなかった。

「天然ねえ……ま、それは楽しみにしとくよ、あ、敵のご来襲だぜ、いっちょやるか!
クリフトー!マーニャ!馬車から出てきてくれよ!」







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