「寒いですねえ」
「ほんと」
真下は雪乃と、駅までの道を歩いていた。
周りはバレンタインデーを楽しむカップルばっかりで、真下は自分たちもそう見えるかな、などと内心思っているのだった。
「真下さん、あの、ちょっと買い物に付き合ってもらえませんか」
こんな風に雪乃から誘われたことはない。真下は飛び上がらんばかりだった。
「は、はい、もちろん!どこまでも付き合いますよ!」


雪乃は、ケーキ屋に寄った。こないだすみれが寄ったケーキ屋である。真下は、女の子はやっぱりケーキが好きなんだな、などと考えながら店に入った。どのケーキもかわいらしい。
「真下さん」
「はい」
「男の人って、どんなケーキが好きなんですか」
「はい?」
「私、ある人にケーキをプレゼントしたくて。チョコレートは、ありきたりかなって」
「はあ……」
真下がどんなにへこんだか、想像に難くない。


「その人って、甘いもの好きなんですか」
「だと思いますけど」
「でも、僕の好み聞いたって」
「真下さんが選ぶのにします」
真下はどうでも良くなって(まあ、それも無理はない)適当にケーキを選んだ。



店員が、雪乃に聞く。
「お持ち帰りですか」
「いいえ、ここで食べていきます」
真下は、なに!という顔で雪乃を見た。







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