情けなくなってぽろりと涙が落ちた。


いったい何のために旅をしているの。
お父様を、サントハイムのみんなを、救うために。
だけど。
私ではきっとできない。
パデキアの種を取りに行くことすらできなかったではないか。


私は何もできない。




後ろでがさがさと音がして、魔物!と思い振り返ると、薪をいっぱい抱えた緑の帽子が見えた。
「クリフト?」
「姫様、こちらでしたか」

アリーナは慌てて涙を拭いた。
「そんなに抱えて大変だったでしょ。ほら!半分持ってあげる」
「このくらい一人で持てますよ」
「持ってあげるって!」
そう言うと、半ば強引に薪を奪い取った。



二人は歩き出した。



「すみません。持っていただくつもりでここに来た訳ではないんですが」
「あら?じゃあどういうつもりで来たの?」
「たまたま、ここを通っただけですよ」
「そう?」



少しの沈黙。お互い薪を抱えて、前を向いて歩く。


「ねえ、クリフト」
「はい」
「クリフトは料理できる?」
「ええ、簡単なものなら」
「そうなんだー。やっぱりできるよねー、普通は」


「いかがでしたか?初めて料理されたご感想は。大変でしたか」
「…からかうなんて、ひどいわね。クリフトがそんな人だとは思わなかった」
「そういう意味ではありません。しんどい思いなさいませんでしたか?」
「……わかるの?」
「はい」

初めてクリフトはアリーナのほうに顔を向けた。







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