アバンが旅立つ日がきた。
村のみんなはとても気まずかった。この青年が悪くないことは、今は十分にわかっていた。
あれ以降もアバンは村の人たちの手伝いをよくしてくれて、本当にいい青年だということが村人全部(いやある一人以外)に染み渡っていた。

ジャンクが声をかけた。
「もう少しいたらどうだね。今ではおまえさんを悪く思うやつはひとりもいない。うちのバカ息子もあんたがいなくなったら寂しがるぜ」
ほかの村人も
「しばらくいやな思いをさせてしまったことを怒ってるのかい?本当に悪かったねえ。どうか許しておくれよ」
「そうだよ、あんたみたいないい人はいないよ、もっとゆっくりしていっておくれ」
と口々に声をかけた。

子供たちが駆け寄る。
「ポップだけじゃなくて、おれにも魔法教えてよ」
「あ、私も!もっと教えてもらいたい!」
「僕も!」

アバンは本当にうれしかった。
「皆さん、ありがとうございます。私はこのランカークス村に来て本当によかった。必ずまた来ますよ。皆さんもお元気で!あ…そうだ、これ何かのお役に立つかもしれない。よかったら見てくださいね」
そう言って何枚かの紙を差し出した。宿屋の主人が受け取った。
「何だね、これは」
「この村がもっともっとよくなる手助けになればと」

アバンはポップを探した。
「ポップ君は今日は?」
「すねていました。一緒に見送りに行こう、と誘ったのに、部屋から出てこなかった…。きっとあなたと別れるのが寂しくて仕方ないのでしょうね」
スティーヌが申し訳なさそうに、そう言った。
「そうですか…。ポップ君にもよろしく伝えてくださいね…。では、皆さん、またいつか」

アバンはみんなに別れを告げ、次の町へと向かった。







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