アバンはあちこちの町や村を訪ねては、子供たちに剣や魔法を教えて回っていた。
そのとき、見込みのありそうな子は、弟子に取ったりする。未来の勇者を生み出そうと。
しかしたいていの子供は特訓の厳しさについていけない。ために、すぐ親元に返してしまう。
これはと思う子供を見つけても、なかなか最後まで修行する(できる)子はいない。今までのところ、皆無と言ってよかった。

なんとしても勇者を見つけ出したい。
アバンは魔王を倒した勇者だったから。

彼は以前、魔王討伐時に一緒に戦った仲間(戦士と僧侶)が住んでいる村へ立ち寄ったことがあった。そのとき、彼ら(二人は結婚していた)の子供であるマァムには魔法などを教えたが、連れて行くわけにもいかず、そのまま村を後にした。

勇者を育てたい。
この世界がまだ平和な今のうちに。
必ずどこかに勇者はいる。

そして、この目の前の少年はきっと勇者を助ける力を持っている。


しかし…しかしだ。


この少年…ポップに、そういう生き方ができるだろうか?


アバンは初めてポップを見たとき、すぐに魔法の才能があることがわかった。
ピンと感じるものがあって、ひそかにマホトラをかけてみた。なんと魔法力が最初からあった。
この少年はきっと、すごい魔法使いになる、それは確信できた。だからこそ、いつもは初日には決してやらない呪文の契約をやってみた。普通の子供には初日に呪文の発動など、ありうるわけがないのだ。

(さすがですねえ、この子は立派な魔法使いになることは間違いありませんねえ。しかし性格はどうでしょうかねえ…。勇者の手伝いができる子は、やはり勇気のある子でないと…。この子にできるでしょうか?)

いかにも得意そうな顔で笑っているポップを見ながら、アバンは心の中で小さなため息をついた。







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