1時間後、謁見が始まる。
果たしてトルネコの友人とかいう商人はトルネコに負けず劣らず恰幅のいい立派な商人だ。

「初めてお目にかかります。このたびは拝謁の機会を得まして大変光栄でございます」
「トルネコ殿には、このアリーナが大変世話になっての」
「は、私もトルネコ殿にはいつもひいきにさせていただいております。
こちらがトルネコ殿と冒険の旅をなさったアリーナ姫様でございますか。
なるほど噂にたがわず、お美しい姫君で。
トルネコ殿にいつぞや聞いておりました印象とは違います」

アリーナは背中がかゆくなる。
おてんばと言われることはあっても、お美しいとはなかなか言われたことがない。

「はっはっは。
どうせトルネコ殿はアリーナのことを、とんでもないおてんば姫だ、とでも噂しておられたのだろう。
まさにそのとおりじゃよ、今日はこのようにかしこまっておるが。
ところで早速だが、何か珍しいものでもあるのかね?」
「は、息子に持たせてまいりました。向こうに控えておりますのがそうです。
ただいま呼びますので。シャルル、絨毯を持ってきなさい」

シャルルと呼ばれた青年はたくさんの絨毯を抱えて入ってきた。
父に似ず凛とした青年で国王もアリーナも絨毯よりは青年のほうに目が行ってしまった。
「息子のシャルルでございます。ただいま商売の勉強をさせておりますので、勝手ながら連れてまいりました。ご挨拶を」
「このたびは私ごときも拝謁の浴に預かりまして大変光栄に思います。
なにぶん見習いの身でありますので失礼を働くやも知れませぬが以後はお見知りおき願います」

国王は思わず尋ねた。
「立派な息子殿をお持ちだの」
「は、まだまだ修行中の身でして。しかしいずれは大成してもらいたいものだと思っております。
どうでしょう、陛下。
シャルルにはまだ商売の話は無理ですので、姫君にこの城を案内していただけたらと」
「父上、何をおっしゃるのですか。王女様にそのような……」
「よいよい。シャルルとやら。これこのとおり、アリーナも商談には退屈なのだ。
アリーナ、城を案内してやりなさい」
「はい、お父様。では行きましょうか」

アリーナは商談には興味なかったのでいい具合だったが、それにしても商人の目的はこっちだったのかと内心思った。








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