私の姫様。
私だけの姫様。



だったのに。
それも今日まで。



砕けたクリスタルのペアのソーダグラス。
もう水さえグラスには注げない。

壊れてしまったら元には戻らない。
だから、だったら、壊せばよかったのに。

もう壊すことさえ、私たちにはできない。




授業の終わりを告げる時計の鐘が鳴り出した。
ドアの外がざわざわしてきた。



最後の授業が終わったのだ。
私たちの最後の授業がこんな風に。



「姫様、陛下が明日の打ち合わせをしたいと」
侍女は惨状の部屋を見て、絶句する。
私たちは、ふたり、なおも馬鹿笑いをしている。


「すっきりしたわね」
「ええ」
「楽しかったわ、最後の時間は。私、やっとあなたのことがわかったの」
「何が、でしょう?」







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