翌日。
クリフトはミネアに尋ねた。
「あの鏡、何も映らなかったんですが…」
「え?ちゃんとアリーナさんのこと想って覗き込みました?」
「ええ、もちろん」
「変ですねえ」
どこかミネアの目は泳いでいる。
「では、私が見てみますわ。クリフトさんの気持ちになって。鏡を返してください」




その日は一日戦闘が続き、一同早めに宿に戻った。

女性陣の部屋。

ミネアは例の鏡を磨いている。
アリーナが興味を持った。


「素敵な鏡ね」
「ええ、それにこの鏡には秘密があるんですよ」
「ええ?どんな?」
「この鏡に好きな人の想いが表れるの」
「本当!?」
「試してご覧になる?」
「え?えーと」
「はい、どうぞ。ただ気をつけてくださいね。好きな人のことを想いながら、覗き込まないと、何も映りませんよ」
「………」




真夜中。
アリーナは鏡を覗いてみる。
きっと。
きっとあの人の想いが映るはず。




何も映らない。
自分の顔が映っているだけだ。




やっぱり。
やっぱりそうだと思ったんだ。
クリフトは私のことなんとも思ってないとは分かってたけど、こうもはっきりすると寂しい。




鏡を持って外に出た。
少し寒い。

自分だけでなく、もう一人外にいるのが見えた。







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