クリフトは一瞬、赤面しそうな思いだったが、今の言葉に深い意味はないだろうと、努めて冷静に考える。


「ありがとうございます。せいぜい頑張ってお仕えいたします」
「それだけ…?」
「は……?」



「結構、今の一言は勇気がいったんだけど、あんまりクリフトには響かなかったかあ」
「は?あの?それはどういう?」



「いいんだ、自分でも分かりかけたことがあるから」
「分かりかけたこと、ですか」
「ふふ、ね、クリフト、もう一杯お茶をいかが?」
「話をそらすことはないでしょう」
「私、クリフトがちやほやされるのがいやなんだな、ってそういう感じだったのよね。
それが何か分かりかけたの」



今度は間違いなくクリフトは顔に血が上ってくるのを感じた。
それを見られたくなくて、ハーブティーに目を落とす。



アリーナは気づかなかったのだろう。話を変えた。
「クリフトが苦しくてしんどくて疲れているときに、私ができることはないのかなあ」
「そのお気持ちだけで」
「うーん、でも気持ちだけでは、解決しないわね。やっぱりしばらく城から離れてゆっくりすべきなんじゃないかなあ。アネイルあたりに気分転換でちょっと行ってみるのはどう?」


ハーブティーからまだ目を離さずにクリフトは続けた。
「私はですね……」

「よく聞こえないわね、顔を上げて話してくれる?」







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