翌朝。
クリフトはまだショックを引きずっていた。


「おはよう!」
アリーナはいつもと変わらず挨拶をする。クリフトは顔が引きつる。
「どうしたの?」
「あ、おはようございます」
みんなが口々におはよう、を言い合う。
クリフトはスムーズに言葉が出てこなかった。

もしかしたら、いい人と思われたいと人から見えるのだろうか。
そうなら、今から私の発する言葉や、行動、そのすべてがそう見えてしまうのなら。
無意識にやっていることが人からそう思われてしまうのなら。




ナーバスな人は、切り替えがうまくできない。


その日、クリフトは散々だった。

「クリフト!薬草あるだろ、とってくれよ、俺、ホイミかける魔法力なくなっちゃった」
「は…あの、薬草は用意してないんです」
「え?いつも揃えててくれてるじゃん…ま、仕方ないか、じゃあホイミかけてくれよ」
「はい」
「わーっ!べホマはいらないよ!魔法力の無駄遣いだよ!何やってんだよ」
「す、すみません!」

「クリフト、キアリーかけてよ」
「はい、ただいま」
「全くどうしたの、今日に限って薬草や毒消し草用意してないなんて。いつもちゃんとしてくれてるのに」
「はあ……」
「元気ないね、さっきの戦闘中もおかしかったし。なんかあったの?あーっ、もしかしたら、このマーニャ様に見とれて?」
「ば、馬鹿な」
「馬鹿とは何よー、んもう、失礼ねえ」




戦闘中、今日のクリフトがあまりに使えないので、勇者をはじめとして、みんなに訝しがられ、ついにはミネアと交代させられた。
アリーナはそれを複雑な思いで眺めていた。







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