クリフトが扉を開くと同時にダール公が3階に着いた。 彼はクリフトを見てひどく驚いたようだった。 「……あなたは、いつか私どもの船が遭難したときに助けてくださったあの島…あの村の神父様では?」 「たいへんご無沙汰しております」 「あの時は本当にお世話になりました…私はずっとあなたにお礼を申し上げたいと思っていたのですよ。こちらには旅の途中でおいでになったのですか?……申し訳ないのですが先だって妻が亡くなりまして……お礼はまた改めて」 王太子が父親に紹介するように言った。 「お父様、こちらはクリフトさんですよ。お気づきにならないのですか?」 「え……?あ、そういえば……本で拝見したお顔に…では、あなたが?」 先ほどから時々話題に上がる『サントハイムの歴史』のことだろう、とクリフトは思った。 「クリフトと申します。あの時はたいへん失礼いたしました。姫様たちの船だとは存じていたのですが、特にお声掛けもいたしませんでした」 「あなたが……クリフト殿だったのですか…。まあ、立ち話もなんですから、私の部屋へ」 「お父様、僕は下にいます」 「うむ」 クリフトはダール公の部屋に通された。 |