少し沈黙の時間が続いた。ややあって、ダール公が口を開いた。



「今日はアリーナのために?」
「はい。来てはいけないかとも思いましたが」
「何でそんな風に思うんです?」
「…………」
「やはりあなたはアリーナに愛されているという自信がおありだったのですね」
「決してそのような!」
「いや、違いますよ。私は怒っているのではありません、本当です」
「……私は決して姫様とは」
「ええ、わかっていますとも。あなたは一度もここに戻ってこなかった。きっとお辛かったはず。私にはわかります」
「…………」
「私もアリーナを愛しているからです」




「だからアリーナの心に誰が住んでいるかくらい理解していました。それでもいいと思ったんです」
「…………」
「アリーナはいい妻であり、いい母親であり、立派な女王でした。そして私を精一杯愛してくれました 、あなたへの愛とは違うかもしれないが」
「…………」
「あなたが来てはいけない、と思ったのは、アリーナの心のバランスが崩れるのを恐れたからでしょう。あなたに会えば、アリーナはやはり動揺したでしょうから」
「…………」




ダール公はクリフトを見つめた。
「私は…あなたが一度もサントハイムに戻ってこなかったことに感謝しているのです」
「!!」
「そうだ、私は度量の狭い人間だ。あなたが戻ってきたらアリーナの愛を失うかもしれない。それが怖かった」
「姫様はそのような方ではありません」
「わかっています。でも、頭では理解していても、やはりあなたのことを想うアリーナは私は見たくなかった。だからあなたが来るのが怖かった」
「…………」








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