そして旅の扉。エンドール。 はじめて見る知らない大陸。そして導かれるように出会った勇者たち。 ただただアリーナを守りたい、その結果、世界中を旅するようになったあの日々。 苦しいことが多かったはずなのに、今、思い出されるのは、楽しかったことのみだった。 エンドールは、町の賑わいは変わらない。 しかし、今はトルネコの店はポポロの店となり、エンドール国王は、リックになっていた。 やはり時は流れたのだ、と思わずにはいられない。 そして自分は時に取り残されている……。 「おーい!あんた王家の墓に行く神父さんだろう!こっち、こっち!」 いきなり大声で呼ばれた。サントハイムから連絡を受けていた船主らしい。 「どうもお世話になります」 「なに言ってんだよ、仕事なんだ。金もらってやってんだ。そんな挨拶はいらねえよ、さ、乗った乗った」 小さな船は王家の墓へと漕ぎ出した。 「あんたあそこに祈りに行くように頼まれた神父さんかい?」 「え?ええ、まあ」 「じゃあ、アリーナって人の墓にも行くんだろ?」 「はい」 「知ってるか?アリーナって人は、ずっと昔よ、エンドールの武術大会で優勝したんだぜ!なんとサントハイムの女王だってよ」 「ご存知なのですか、姫さ……女王様を」 「俺は観客席で応援したよ、俺と年が一緒くらいの女の子が、次々に敵を投げ飛ばしてよ、すっげえなあって思ったよ。デスピサロとの決勝見たかったなあ。きっとデスピサロにも勝ったと思うぜ、あのお姫さんなら。あ、決勝戦はなかったんだよ、デスピサロが逃げちまってさあ」 「………デスピサロという人はきっと強かったと思いますよ」 「あんた見てもいねえのにわかんのかよ。絶対お姫さんの勝ちだったぜ」 「……かもしれませんね」 クリフトは苦笑した。 「何がおかしいんだ。全く神父さんてのは、心の中がわかんねえよ。そういやあ、あの姫さんにも、お付きの者に若い神父がいたなあ。そいつともう一人いたよ、じいさんが」 「神父ではありません。その頃は神官職です」 「あんた、決め付けるように言うが見たのかよ。ま、どっちでもいいや。なんかえらく真面目そうな神父さんと、頑固そうなジジイだったなあ。観客席で応援してたよ。あれも見ものだったなあ、すげえ声援だったぜ」 「そうですか」 「ありゃあ神父さんのほうは、姫さんに惚れてたと見たね。ま、しょせん結ばれない何とかってやつよ」 「……そうでしょうね」 「だけど姫さんも好きみたいだったぜ、あの神父さんを」 「…………」 「まあ、16・17くらいのガキの頃は、お互い好きかどうかもわかんねえもんよ。俺もあの姫さんに片想いしたけどよ、本当に好きだったかはあやしいもんな」 「…………」 それからしばらくは、二人とも何も言わなかった。 |