「あんた、王家の墓に入れるってことは、結構身分の高い神父さんなんだろうなあ」 「いえ、そんな」 「俺の分も祈っといてくれよ」 「はい」 「ほんとにかっこいい女の子だったなあ、あのアリーナって人は。一緒に旅をしていたあの二人がうらやましかったよ」 「ええ、楽しい時間でした」 「……あんた時々変な返事するなあ。本ばっかり読んでないで、たまには外に出たほうがいいぜ。じゃ、俺は待ってるよ、ここで」 「いえ、私はキメラの翼を持っていますので、お帰りになられてください。それからこれは、ほんの少しですが」 「金はサントハイムのほうからもらったよ」 「いいえ、これは船賃ではなくて、楽しい話をしていただいた御礼なのです」 「そうかい。じゃあもらっとくよ。元気でな、神父さん」 「ありがとうございました」 クリフトは王家の墓に入った。 はぐれメタル狩りをした昔の面影はなく、今は静かに死者が眠りについている。 つい最近建てられたばかりの墓を見た。アリーナの名前が刻まれている。 何も言わず、ただ墓を見つめていた。 祈りを捧げるはずだったのに、何もできなかった。 涙が流れる。涙をぬぐうことも忘れて、立ち続けていた。 やっぱり姫様はお亡くなりになったのだ。冷たい石の下にいらっしゃるのだ。 頭はそれを理解していた。 だが目の前の無機質な墓石と、思い出の中のアリーナが、どうしても結びつかない。 |