3日目。


クリフトはようやく落ち着きつつあった。
「取り乱すなどみっともないことだ。私は神父失格だ」
そうつぶやいて、もう一度手紙をよく読んだ。
どうも気になる。姫様が知らせるな、とおっしゃったという内容が理解できない。
手紙をやり取りしていることはサランの神父との秘密だった。誰にも口外していない。もちろん向こうもそのはずだ。なぜ、姫様がご存知だったのだろう。


クリフトは荷物をカバンに詰めた。
サントハイムに行こう。


シスターは何も言わなかった。今まで一度もここを離れたことのないクリフトが、行こうとするのはよほどのことなのだ。
「神父様、どうぞここのことはご心配なさらずに」
「勝手を申し上げてすみません。よろしく頼みます」
「はい。それからこれをどうぞ」
シスターが差し出したのは、キメラの翼だった。
「どうしてこれを」
「サントハイムにいらっしゃるのでしょう?神父様が昔おいでになった。でしたら、これですぐいらっしゃれるじゃありませんか」
「それはそのとおりですが…」
シスターは優しく微笑んだ。
「行ってらっしゃい、神父様。でも必ずこの島に戻ってきてくださいね。まだまだ教わらなくてはならないことがたくさんありますから」
「はい、必ず戻ってまいります。では、頂いていきます。ありがとうございました」


クリフトは宙に舞った。








BACK   小説入り口  NEXT