翌朝。


クリフトは頭が重くて、起きるのに若干しんどい思いをしたが、いつものように身支度を整え、階下に降りていった。


エルジェもシスターもクリフトに優しかった。
昨夜あれからどうだったのか、手紙の内容はどうだったのかなど、一言も尋ねなかった。



朝食をとりながらエルジェが尋ねた。
「クリフト様、お城にはいらっしゃるのですか?」
「そうしようと思っています。一言お悔やみを」
「こんなときではありますが、きっとみなさん歓迎なさいますでしょう」
「私のことなどご存知の方は、もうどなたもおいでにはなりません」
「そんなことはございません。王太子様もきっとお喜びになるでしょう」
「…………」

アリーナの想いのために、元城仕えの神官の名前をつけられた王太子は、かえって自分を恨んでいるのではないかと、ふと思った。



1時間後、クリフトは出発する支度を整えた。
エルジェとシスターが見送りに来た。
「昨日は泊めていただきありがとうございました」
「いえいえ、せまい部屋で申し訳なかったです。…クリフト様、またおいでくださいますでしょう?」
「……そのときは、またお世話になるかもしれません」
「いつでもお待ちしておりますよ」
「ありがとうございます、では……」



まだ逡巡する思いのクリフトの目の前に、懐かしいサントハイム城があった。







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