「クリフトー、クリフト、起きてる?」
朝からうるさい襲撃だ。
例のお姫様が、お付きの神官をたたき起こしにドアをノックしている。
もっとも当のクリフトは起床済みで着替えも済ましている。

「はい、ただいま。姫様、ソロさんはまだお休みですので、お静かに願います」
あのノックじゃ寝てられないよ、とベッドの中でひとりごちた。
ドアを開ける音、人の飛び込む気配。

「クリフト、見て見て!外にね、軍隊が来ているの!たくさん兵士もいるのよ!今日はこの町の近辺の警護なんですって!この町の近くに野営してるんですって!私と手合わせしてくれないかなあ!」
「どうでしょうか…それは難しいのでは…仕事でいらしてるのですから」
「そっかー、でもお願いしたいなあ……だってとっても強そうなのよ!ね、今日だけ、サントハイム王家の特権使っちゃダメ?」
「ダメです。私たちはあくまで王家とは無関係の旅人でいなくてはいけないのです。都合のいいときだけ王女に戻られてはいけません」
俺はベッドの中で、融通の利かない男だ、と思って聞いていた。


「そう…そうよね……。ごめんね、私、やっぱり自分のことしか考えてないわね。出てくるときはお忍びなんだから、姫様なんて言わないで、とか言っておきながら…。やっぱりどこかで自分が王女だって思ってるやな人間なんだわ」
「いえ、そんなことはありませんよ、姫様がいやな人間だなんて、そんな…そんなこと、私は!」
いやに強調した口ぶりに、俺は、え?と思った。
おいおい、お前、もしかして、そのお姫様のこと好きなのか?


「だったらいいけど、クリフトに嫌われちゃったら、私、悲しいもの」
「え?」
「そうなの、それにクリフトがほかの人に嫌われるのもいやなの、昨日ソロに言ったのよ、クリフトを嫌わないでって」
「ソロさんは私をお嫌いなのですか?」
「ううん、そうじゃないって。でもね、なんだかクリフトと合わないかなーって思ったから、クリフトっていい人なのよって言っちゃった。なんでかなー、私、クリフトのことがすっごく気になるのよね」
「ほ、本当ですか!」
「あたりまえじゃない。クリフトは私の大事な人だもの」
「…………!!」
俺は毛布の中でドキドキしてきた、まさか、こんな朝っぱらから、大告白大会でもあるのか?







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